自転車日記

1999 TDF

変換 ~ tour 1
1999年7月、生まれて初めて飛行機に乗り、シャルルドゴール空港からトゥールーズへ。そこからは暮れなずむフランスの風景の中をバスに乗り奇跡の水がわくというルルドへ。おとぎの国のホテルみたいなところに入り、明朝の出発に備えてそそくさとベッドに。
翌日、早朝に起こされお弁当を持ってまたバスに乗り、ピレネーのふもとに着いてしばらく山道を歩いたらこんなところに。
これはまごうかたなき、ヴィデオでさんざん見たツールの勝負所・ツールマレー峠。ついに来てしまった…! ややあって、下のほうから赤いレースディレクターの車に先導され、逃げグループが上ってきた!ちょっと待ってください。まだ心の準備が…!

tour4
嵐のようなギャラリーの声援(怒号?)の中、まるで重力がないかのように選手たちが駆け上がっていった後、我に返った私はようやく周りを見回す余裕が生まれた。すると、あの有名な山岳ポイントのそばにレストラン「ツールマレー」があるではないか!そうそう、ここの前で選手たちに下りで体が冷えないように新聞紙を配るおじさんがいるんだよな!
とまれせっかく来たのだからレストランに入ろうではないか。とさっそく入り、名物メニュー「マーモット(リスのでっかい奴みたいなの)定食」に舌鼓を打つのであった…というのは真っ赤なうそです。御免なさい(おいおい)

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ツールマレー峠の下り。思っていたより斜面は傾斜がなだらかだった。クルマだったらコースアウトしたらゴロンゴロンと転げ落ちちゃうかもしれませんが、自転車だったら「てへっ、ころんじゃった」くらいで済むかもしれない(おいおい)。なんにせよ自転車乗りだったら、一生に一度はこんなダイナミックなコースを走ってみたいものだ。

変換 ~ tour6
さて山岳ステージも終わり、今日はボルドーがゴールの平坦ステージ。ボルドーは言わずもがなワインで有名ですね。街並みも古くておしゃれで、とっても魅力的。

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ボルドーで集団の到着を待つ皆さん。老若男女、それにわんこもいてツールが世代を超えた国民的行事だということが如実にわかりますね。

変換 ~ tour8
さて今日はシャンゼリゼゴール前日の個人T.T.。スクリーンにはフランス期待のR・ヴィランクがいままさにスタート、というところが映し出されています。この日は当然のようにL・アームストロングがステージ優勝し、総合優勝をほぼ決めました。このころはまさかあんなことになるとは誰も思っていなかった…かも?
bmp猛暑の個人T.T.観戦を終え、ポワチエの駅前のカフェで「あすはシャンゼリゼだ皆さんお疲れ様宴会」を開き、飲めや食えやで盛り上がり。TGVに乗り込みあっというまにパリ着。そして翌朝、メトロに乗りついにシャンゼリゼに!

変換 ~ tour10
シャンゼリゼには猛暑の中、100万人(!)ともいわれる観客が集まり、ジミ・ヘンドリックスの「ヴードウ・チャイル」が大音響で流れ、パブリックヴューイングには刻々とパリ市街に近づきつつある集団の映像が映し出され、興奮を煽り立てます。↑の写真に写っているのは「彼女にこれを見せたかった」と新婚旅行にツール観戦を選んだNさん夫妻。

変換 ~ tour11
そして、大集団がパリ市街に突入しました!遠方から近づいてくる地鳴りのような歓声、ああ~っ!大集団が目の前に現れました!3週間を戦い抜いてきた選手の鮮やかなジャージが、鍛え抜かれた体が、美しいマシーンが、まばゆいばかりに輝いています!なんということでしょう!グダグダになるほど暑いのに、わたくし、全身に鳥肌がたって血液が逆流するような、自分でもコントロールできないような興奮状態に!もうどうにでもして!(おいおい)

ところで↑の写真の手前に写っている熟年カップル、なかなか興味深いですね。二人とも、この日に合わせたようなフレンチ・トリコロールとグリーン(ポイント賞ジャージの色)のウエアに、自転車もシックなもので決めております。とくに右の女性のロードバイク、オーソドックスなスチールバイクのようですが、コンポーネントはシマノ全盛のご時世にあえてカンパニョーロ、そして前後にサイドバッグのステーが付いています。このロードバイクに荷物を満載して国境をこえてツール観戦にきたのでしょうか。う~んかっこいい。

昔「カーグラフィック(自動車誌の)」にフランス人の女性二人が軽快車にサイドバッグを装着して、ロングスカート姿でツーリングを楽しんでいる写真の折り込みグラビアが入っていて「フランスの女子はこんなに気軽な格好で自転車旅をしちゃうんだ!」と軽いショックを受けたものですが、3週間もかけてフランスを一周しちゃうツールというレースにしろ、なにかフランス人にとって自転車は自由と独立のシンボルなのかな~、なんてことを思ったりもしたフランス一週間の旅でした。

フイリツプさんの秘密基地

都内北区に有るK駅の一つしか無ひ改札を出て跨線橋をわたると、ちひさな商店街が有る(注1)。まるで地方のひなびた駅前のやうな狭いエリヤに定食屋、蕎麦屋、銭湯、クリイニング店、居酒屋、薬局、八百屋、鮮魚店、スナツクなど生活に必要な店がすべて有る、コンパクトで住み心地の良ささうな一帯である。こんな処なら、海外から何も持たずに単身やつて来ても、快適に暮らして行けるであらう。此処は私が仕事帰りにいつも自転車(ナシヨナルカラアのバツソ(注2)若しくはチエレステのビヤンキ)で通る道でも有る。
 
初秋の有る日暮れ時、「そろそろウインドブレエカアを着よふかな」と思ひつつ自転車でサトちやん(注3)の前を通り過ぎ、八百屋の虎猫(注4)に挨拶して角をクイツと曲がると、小道ぞひの建物に明かりが点ひて何台かのツウリング用自転車(注5)が見へた。「オヤ?こんな処に自転車屋があつたかな?」気になつた私は数米先で自転車を停め、先程の建物の前に戻つた。

引き戸が開いて居たので中を覗くと、「パタアソン(注6)」の画に出てくるやうな服装(注7)をした外国人の男性がツウリング用自転車の整備をして居るのが見へた。建物の中には三、四台のツウリング用自転車が鎮座ましまし、其れに加え部品なども色色ある。男性が私に気付ひたので、私はおずおず「あつ、こんばんわ、あのう、此方は自転車屋さんですか?」と訊ねた。

「此処は僕の自転車のガレエジなんですよ」四十代位だらうか、整つた顔立ちの外国人の男性は、やさしさうな笑みを浮かべて答へた。

「済みません、戸が開いて居たので自転車屋さんかと思ひまして。素敵なツウリング車ですね!」私は心に浮かんだ言葉を率直に述べた。

「こういふ自転車は好きですか?」

「はい、最近の世間はロオド車ばかりで、こういふ素敵なツウリング車が減りましたね。好ひなあ!旅に出たく成りますネ!」

「此処はネ、最近見付けたんですよ。自転車が増えちやつて、置く処を探して居たんだけど、やつと見つかつてネ。此処なら自転車をゆつくりいぢれますネ。見ますか?」

「僕の自転車のガレエジ」といふ言葉に私が意外さうな顔をしたのを見てとったのだらう。男性は自分から説明をした。そして私は彼の好意に甘へ、ちよつと中に入つて見せてもらふことにした。

「好ひですね~、此の自転車」ぢろぢろと自転車を観察する男は、彼の目には自転車マニヤに見えたのだらう(注8)。「だうです、此れ、探したんですよ」彼は傍らに有つたサンツアア(注9)の歯車比変更器を手に取り、嬉しさうに私に見せた。サンツアアといへば、質実剛健な作りで曾ては島野と互角に渡り合つた日本の自転車部品メエカア。そんなサンツアアの部品を探すとは、この男性はさうとうな自転車愛好家に違ひない。あるゐは彼の所有するクラシカルな自転車には現行の歯車比変更器はうまく適合しなひのかも知れない。

男性は他にもあれこれと部品を手に取り、楽しさうに説明をしながら私に見せて呉れた。それぞれが思ひ入れの有る品なのだらう。そして、さういう御気に入りの部品を組つけて完成させた自転車は、彼にとつてかけがへの無ひ物なのだらう。其れはキラキラ輝く彼の目を見れば分かる。

「あ、申し遅れましたが僕、フイリツプと申します」
「萩原です」

幾つかの部品を見せてもらつてから、我々は名乗りあつた。そして、自分達の好きな幾つかのコオスについて少し語つた。其れにしても彼の日本語は流暢だ。オウセンチツクな自転車の服装と言ひ、インテリヂエンスを感じる。職業は語学の教授か、或いは貿易関係の仕事かも知れなひ。

「突然お邪魔して済みませんでした。また、自転車を見せてくださひ」

私は自分の自転車に跨がり「此の自転車は Japan national color なんですよ」と、白い車体と赤いリムを交互に指差した(自分の自転車を自慢しているのか)。「気を付けてネ」彼は戸口の処にニコニコして立っている。「では」私は並列に装備した猫目(注10)の前照灯を点けて自転車を発車させた。


自転車を走らせながら私はふと考へた。突然御邪魔して、あれこれ見せてもらひ、彼に迷惑ではなかつただらうか。プライベエトタイムを邪魔してしまつたかも知れない。友達でも無ひのに、我ながら厚かましひ奴だ。


其れからは、自転車で彼のガレエジの前を通つて、戸が閉まつて居れば灯りが点いて居てもそのまま通過し、戸を開けて彼が居て何かして居れば、自転車のベルを軽く鳴らして挨拶代わりとして通り過ぎるやうにした。ガレエジに居る時は彼にとつては趣味に浸れる貴重なプライベエトタイムであらうから、邪魔をしなひ事にしたわけである。

時時、ガレエジの前に彼の物では無ひらしひツウリング用自転車が停まってゐることがあつた。多分自転車仲間の物だらう。通りすがりの分際でいきなり御邪魔して色色見せてもらふやうな厚かましい奴は、私以外にはさうさう居まい。


冬の間はガレエジに灯りが点ひて居る事はあまり無かつた。彼も色色と忙しひのだらう。


暖かくなつてくると、ガレエジで彼が自転車をいぢつてゐる姿を度度目にするやうになつた。戸が開ひて居て彼が何かやつてゐれば、「チリリ~ン(注11)」とやつて、彼に挨拶をした積もりで通過した。

夏の夕暮れ時分、彼がガレエジの戸を開け放ち、作業をするでも無く、シヨオトパンツ姿で椅子に座つて下町の長屋のおやぢのやうな風情で夕涼みをして居るのを度度見た。

彼は自分の生まれた国を遠く離れて、東京の片隅のこの小道を通る人人や猫ども、巣に帰へる鳥たちの囀り、鮮魚店の店主と客のやり取りなどを束の間、日本の下町のおやぢになつて無心に楽しんで居たのでは無いだらうか。さう思へて来る。

処でおまへは彼とサイクリングしたかつたのでは無いか、といふ向きも有るだらうが、全体私は人とサイクリングをするのは到底好まなひ性分で有るので、彼とサイクリングしたゐとは思わなかつた。只、彼が自転車を楽しんでもらへたら良ひなと思つただけである。



そして季節が巡り、いつしか彼のガレエジに灯りが灯つて居ることはめつたに無くなつた。其のうち硝子戸に写る自転車の車輪の影も無くなり、何時通りかかつても中は暗い儘だつた。

私はもふ彼が此のガレエジを引き払つた事を理解した。彼も色色あるのだらう。他に良ひガレエジが見つかつたのかも知れなひし、此の国を離れる事になつたのかも知れなひ。

そして私は今日もまたいつものやうに八百屋の角をクイツと曲がり、スナックサニイの角をキツと曲がり、都電荒川線を越へて家路に着くのであつた。


ゆきかふ人は留まることは無く、それぞれ何処からか来ては何処かに去つてゆく。

只、八百屋の虎猫だけは全てを見て居たが何も語る事も無く今日もぢつと店先から小道を行く人人を眺めて居た。

                                               

をはり

変換 ~ neko




注1:都内にあつて、人通りが多いとは言へない狭いエリヤに、全てのヂヤンルの店が過不足無く有るのも今時めづらしいのでは無ひだらうか。「狭いエリヤ」とは書いたが、スナツクサニイの先の東北線の踏切を渡るとそこから賑やかな商店街が始まっているので、実質的には長い商店街と言へないことも無ひ。

注2:フレエムの色は白なので、其れに赤いリムのアンブロウヂオのホイルを履かせ、日本国旗に敬意を表した。我ながら良ひ色合ひだと思ふ。

注3:ご存じとは思ふが、緑色の小象のキユウトなミドル昭和キヤラで有る。今見てもまつたく古さを感ぢない。

注4:雉虎といふのだらうか、余が幼少期に可愛がつていた猫と同じ柄なので可愛ひさも一入で有る。

注5:最近の強化プラスチック製の華奢な自転車とは違ひ、有る程度の荷物を積載して旅するための旅行車。材質は主にスチイルで、丈夫に造られて居る。

注6:フランク・パターソン 英国のイラストレエタア。ペンで描かれた精緻なサイクリング画で有名。其の絵はモノクロで居ながら、イマジネイシヨン豊かな世界が広がって居る。

注7:ジャケット・ニッカーズ・ハンチングなど、品格を持つたサイクリングの服装。亜熱帯と化した昨今の我が国でサイクリングするには多少不向きか。

注8:概して自転車のパアツなどに拘る。ことわつて置くが筆者はマニヤではない。調子良く走れれば自転車は何でも良ひと思つて居る。

注9:現在でもフアンが多ひ。またレエスシインに復帰して欲しいと思ふのは私だけであらうか。

注10:夜の荒川沿ひの走行を考慮し、猫目(cateye)の灯火を2連装している。此の為、動物の目には猫科の大きな動物が接近してきたやうに見へるのだらうか、猫が慌てて逃げて行くことが有る。済まなゐと思ふが、安全の為には致し方無ひ。

注11:警音器は、スポオツ車によく取付られている「チイ~ン」といふ音の物では無く、一般車用の「チリリン」といふ音の物を装着して居る。このほうが周知された音だと思ふからだ。
 

音がしない乗り物

自転車通勤に防寒具がいらない季節になり、そろそろ皆さん、遠出がしたくなってきたころと思います。私も昨年11月にしまい込んだロードを出しますかね~。

私の自転車、なんちゃってシクロクロスのビアンキ君と梅丹カラーのルイカツMTBには、スポーク用LEDと、ハンドルバーに「自転車用の鈴」を装着しています。スポークのLEDは夜間走行の安全のため、鈴はさりげなく「自転車が通りますよ」というアッピールをするためですね。鈴は振動があればずっと鳴っているので、人によっては乗っていてうっとおしく感じるかもしれませんね。

今日、それをつけたビアンキ君でお仕事に向かう途中、歩道を押し歩いていたのですが、 凸凹した歩道のためにチリチリと鳴っていた鈴に、前を歩いていたコワモテの男性が振り返って「うるせ!」と声を荒げました。おそらく、歩道で歩行者に「どけどけ」とベルを鳴らす無法者と思ったのでしょうね。

帰るとき、私は自転車につけていた鈴を取り外しました。歩道でベルを鳴らす無法者と一緒にされたくありませんからね。走ってみると、いやぁ、これは静かでいいですね(笑)。本来、自転車は「音がしない乗り物」ですし、走行中鈴の音がしないぶん、耳からもより情報を得られる気がします。鈴がなくても、特製アダプター(キャットアイのライト用パーツを加工したもの)を介して装着した一般車用のベルもありますし、肉声で「自転車通ります」「すみません」などと伝えるのも有効ですし。あっ、夜はいきなり声をかけると不審者と思われますから、まずスピードを落とすことが重要ですね。

帰路、月に照らされて「音がしない乗り物」ですっかり暖かくなった荒川ぞいをまったりと走るのがとても気持ちよかったです。自転車乗りにいい季節がやってきましたね。みなさんも春のライドを楽しんでください!

 

11月26日のにっき

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今週は11月だというのに雪が降ってさんざんでしたね。このへんにも残雪がちらほらありました。この立てた稲藁をアートっぽいと感じるのは私だけでしょうか。

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林の中はすっかり落ち葉のじゅうたんです。この色の交ざり具合もまさに自然の織りなすアートだ、と感じるのは私だけでしょうか(リピート)。さあて、来週から12月ですね。荒川ローディくん、ウエアの準備はいいですか?私はロードバイクはもう部屋にしまっちゃいましたよw

 

スぺ社のシューズの件、一件落着

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四つ前の記事で、「スぺ社のSPDシューズが踏み込むとキュッキュッと異音がする」と書きましたが、その後、「踏み込むとインソールがズレるのかな?」と思ってインソールを換えてみましたが変化なし。どうやらシューズ自体にはやはり異常はないようです。アウトソールとペダルが干渉しているわけでもなさそう。

となれば、あとはクリートかな?とクリートとペダルの嵌め合い部をチェックしてみると、ちょっとガタがあります。これかな?とクリートを交換してみると、異音はピタリと止まりました。 異音の原因はクリートの摩耗でした。

シュ-ズくんの無罪は立証されたわけです。うたぐってすみませんでした(誰にあやまってるの?)。福島晋一選手・新城幸也選手はじめ、世界のトッププロが愛用してるスぺ社のシューズが、そんなに簡単にダメになるわけないよね!(宣伝料はもらってませんよ!)4年ほど使いましたが、ベルクロの固定力は低下してないし、まだまだ使い倒しまっせ! 

というわけでシューズ問題もかたづき、まったりと下町ポタ。
 002
↑おぢさまがのんびりと釣り糸を垂れていらっしゃいます。
004
↑花に埋もれてるのは、トイレのナニをアレする装置ですよ。平成生まれのかたは知らないだろうね。

005
007

009
↑優美な造形です。
015
↑昔はこのへんで泥団子を作って遊んでたのさ。
019
↑荒川のツインアーチ。





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