ドアーズのジム・モリソンのカッコよさでロックに目覚めた(カッコよくなければロックじゃないよね)バカガキの私ですが、高校生まではお金がないので音楽はもっぱらラジオで聴いていました。いわゆるひとつの~、キヨシローさんのRCサクセションの名曲「トランジスタラジオ」の世界ですか~。(某N嶋氏口調で)

'70年代、毎週土曜日の午後はNHK関東各局がFMラジオで独自の音楽番組を放送(注1)していたので、それを聴くのがなによりの楽しみでした。土曜日は午前中で授業が終わると本郷高校(注2)生のオアシス・オババ(注3)にも寄らず級友たちともつるまずにすっとんで帰り、家に着くや間髪を入れずラジオのスイッチをオンし、ほとんど寝るまで音楽漬けでした。

何かアメリカの映画に出てくる、勉強はまるでダメで音楽ばっかり聴いているニキビだらけの少年みたいですが、ただただロックを聴くのが好きだったのですね(まぁ今もだいたい同じですが)。

そして就職して自分で使えるお金ができるとさぁ大変です。今まで欲しかったレコードを手当たり次第買いまくります。家に入れるお金以外はほとんどレコードにつぎ込みました。それもブリティッシュロックが大半です。なぜブリティッシュロックかというと、もうこれは「肌に合う」としか言えないかもしれません。やはり島国同士、気が合うんでしょうかね。

そのころ勤め先は九段下寄りの西神田で、帰り道にはレコード屋さん(中古レコード屋さん含む)がいっぱいありましたから(注4)、毎日のように何かしらレコードを買っていました。中古ならLPでも1500円でしたし。LPでピンとくるものがなければシングル盤を買うという具合です。シングル盤っていいですよね。聴いたことのないバンドのLPを買って「あちゃ~」っていうより、損害が少ないですから。あとたまに、LPには入っていないスペシャルバージョンの曲がシングル限定でリリースされることもありますし、シングル盤の情報も要注意!てな感じです。

いやしかし買いまくりましたね。当時はロックのレコードでもミリオンセラーとかよくありました(注5)し、私だけでなく、みんなレコードとかよく買ってましたよね。音楽業界にとってもいい時代だったのではないでしょうか。まぁ私は売れている音楽とかには「これ、いいかなぁ?」的に、全く興味を示しませんでしたがね。

好きなレコードが買えるようになって、まずは聴きたかったいくつかのLPを買いました。ロキシー・ミュージックの『ロキシー・ミュージック』(注6)、モット・ザ・フープルの『ライヴ』、キングクリムゾンの『太陽と戦慄(邦題)』(注7)、ウィッシュボーン・アッシュの『ライヴ・デイト』(注8)、サンタナの『キャラバン・サライ』(注9)、イエスの『イエス・ソングス(3枚組)』(注10)などです。なぜかライヴアルバムが多いですね。多分、これらのバンドのライヴが見たかったんでしょう。よくわかりませんが(笑)。えっ?サンタナはブリティッシュロックじゃないだろって(注11)?そうなんですか?(おいおい)。

いずれも、ラジオで聴いて「おおっ!」と思ったり、洋楽ファンのバイブル『ミュージックライフ』で写真を見て「かっこいいなぁ!」と思って気になっていたアーティストです。まぁ正直な、賢い買い方ですね。いくら売れてるアーティストだって、他人の尺度なんかあてになりませんからね。以前の記事でも書きましたが、昔は情報が少ないのに加えて、実際に音に触れる機会も少ないので、アーティストの写真を見て音を想像するのは普通のことでしたから。見た目がかっこいいアーティストは美的感覚も鋭いので、音もいい場合が多いのですね。

で、やっとモット・ザ・フープルです。これも、『ミュージックライフ』で見て、挑発的なビジュアルと中学生のころ親しんだグラムロック的な雰囲気、そしてイアン・ハンターがばかでかい斧のようなギター(注12)を弾きながら歌う写真が強く目に焼き付いていましたし、モットを有名にした曲「すべての若き野郎ども」はラジオで聴いて知っていたので、「ライヴはさぞかし凄いんじゃろうな」と、スタジオ盤より先にライヴ盤を買ったわけです。それに、ミュージックライフには「ロックバンドとして史上初、ブロードウェイ(中野のじゃありませんよw)で公演。前座はいま売り出し中の新鋭バンド、クイーン(注13)(なんとクイーンがモット・ザ・フープルの前座ですよ奥さん!)」(括弧内は筆者コメ)「コンサートでは暴動がたびたび起こる」などと紹介されていましたから、期待値は爆上がりです。

で、聴きました。…いやいやいやいや、期待を裏切らないライヴに、すっかりしびれてしまいました。強烈にドライブする音の塊、イアン・ハンターの激しくアジるヴォーカル、エリアル・ベンダー(注14)のワイルドかつドラマチックなギター、そしてリリカルでいながら激しく訴えかけてくるナンバー…とくに地元イギリスはハマースミス・オデオンで行われたギグの演奏を収録したB面(懐かしい響き!)の凄まじい演奏は筆舌に尽くしがたいです。あえて動画とかのURLは載せませんが、気になるかたは「モット・ザ・フープル ライヴ」で検索してみてはいかがでしょう。ステージは現代に比べると凄まじくシンプルですが、演奏はバッチグーですよ!

しかし、なんとこのモット・ザ・フープル、ライヴアルバムをリリースしてしばらくして分裂してしまい、私がこのアルバムを買ったころにはイアン・ハンターは元デヴィッド・ボウイの「スパイダース・フロム・ザ・マース」のミック・ロンソンと「ハンター・ロンソンバンド」なるものを結成しますが結局長続きせず(イアンが倒れたためとか)、モット・ザ・フープルの残党諸氏も新ヴォーカリストを迎えて再スタートするも、これもパッとせず。ファンとしては残念な日々でした。


その後長い年月を経て、2009年でしょうか、オリジナルメンバーで「あの」ハマースミス・オデオンでリユニオンコンサートを行いました。いやぁ、もうこのライヴの映像、熱烈なファンなら号泣必至ですね。ね、モリッシーくん。ミック・ラルフスがだいぶふくよかになったのは残念ですし(人のこと言えるのかいw)、ドラムのバフィンは体調不良で不参加でしたが、御大イアン・ハンターは全く体型も変わらず、激しくアジるヴォーカルも全く衰えず、という風情でガンガン歌いまくり弾きまくります。さすが華麗なる船頭さん、もとい華麗なる煽動者(当時日本のレコード会社がつけた叩き文句)w。ミック・ラルフスの「これぞブリティッシュロック」というギターもギンギラギンに鳴っていますし、オヴァレンド・ワッツも膝上丈のギンギラギンブーツこそ履いていませんが、足をガッと開き、ファイヤーバードベースから指弾きながら硬質なサウンドを繰り出しています。もう私は泣きっぱなしですw。まさに「ロックンロール黄金時代(邦題曲名)」です。

ところが最近、ショックなニュースが流れてきました。あの「魅せるベース野郎」、モットのサウンドの要オヴァレンド・ワッツが闘病のすえ、逝去したというではないですか。数年前なくなったバフィンに続き、なんということでしょう!クリス・スクワイヤもグレッグ・レイクもジョン・ウェットンも、そしてオヴァレンド・ワッツまでも…なぜこうも英国のナイスなベースプレイヤーばかりが…さすがにベーシストが逝ってしまったら、もうモット・ザ・フープルとしてのライヴは永遠にないのか。ああ。


…そこで私、若いミュージシャンの方にお願いがあります。かつてデヴィッド・ボウイが瀕死のモット・ザ・フープルに送り、バンドの解散をまぬがれた名曲「すべての若き野郎ども(邦題)」、作者のボウイはすでにこの世の人ではなく、イアン・ハンターも結構なお歳(失礼)ですから、いつまで歌えるかわかりません。この名曲が忘れ去られてしまうのはどうしても我慢できないのです。かといって、私には演奏能力も歌唱力もなく仲間もいない。この曲のよさをわかる若きミュージシャンに歌いついでほしいのです。日本人でも英語圏のかたでもかまいません。老い先短い(笑)ロック馬鹿のお願いです。あとは頼んだぞ。


「ロックンロール黄金時代は終わらない 子どもたちが笑い、泣く心を失わない限り」(ロックンロール黄金時代より)






(注1)毎週土曜日の午後、NHK関東各局が独自に音楽番組を放送していた。これらのラジオ番組を聴くことは、私にとって1週間の最重要課題だった。マジで。レコードなんかそうそう買えないからだ。私のお気に入りはなんといってもNHK浦和さんの「浦和ミュージックサタディ」。当時埼玉県浦和は「ロックのメッカ」と言ってもよく、荒川の河川敷で開催されていた「田島が原フリーコンサート」や、浦和の埼玉会館でも伝説的なロックコンサートがよく行われていた。

(注2)筆者の出身校(笑)。豊島区駒込にある。駅的には駒込駅より巣鴨駅のほうが近い。デザイン科もあったが(筆者が卒業した)現在は廃止されている。

(注3)本郷高校のそばにあった駄菓子屋。塩煎餅・ペヤング・チェリオ・おでんが人気メニュー。A川区在住のH君は時々、店主の「オババ」の目をかすめておでんを一つ二つちょろまかしていた(笑)。部活後の運動部の生徒にも人気が高かった。

(注4)今も昔もお茶の水~神保町~水道橋界隈は音楽産業(笑)が盛ん。神保町すずらん通りにあった「ササキレコード社」には通算1万回(というのは嘘です。御免なさい)くらい入ったかも?

(注5)イーグルスのアレとかピーター・フランプトンのソレとか。

(注6)ロキシーミュージックの記念すべきファーストアルバム。第一印象は、サウンド・ビジュアルとも「なんじゃこりゃあ~!」。いやいやたまげたのなんの。ブライアン・フェリーのエキセントリックなボーカルはじめ音楽的なインパクトは絶大で、「イフ・ゼア・イズ・サムシング」のもたらす高揚は、同年代のデヴィッド・ボウイの「スターマン」をはるかに凌駕する。

(注7)キング・クリムゾンの歴史の中でもおそらく最強のメンバーによるアルバム。「音楽の妖精」ジェイミー・ミューアも重要なアクセントを加えている。

(注8)美しいギターサウンドと空気感がたまらない。私の長年の愛聴盤。

(注9)ジャズっぽいというべきかエスニックぽいというべきかサイケデリックというべきか、いやいややっぱりスペーシーサウンドというべきか、とにかくアルバムジャケットがすべてを表しているだろう。

(注10)やっぱりスペーシーサウンドといったらこっちかな。この音宇宙は驚異的。

(注11)まぁブリティッシュロックでもアメリカンロックでもどっちでもいいじゃないですか(自分突っ込み)

(注12)ギターのボディが金属で、巨大な「H」形なんですから奥さん。オヴァレンド・ワッツもなんかサメみたいな形のベースを弾いたりしてましたね。まぁサービス精神なんでしょうね。

(注13)後年、クイーンのほうが圧倒的に売れっ子になっちゃいましたね。ま、それも無理ないですよね。イアン・ハンターやめちゃうんだもんなぁ。クイーンは日本の女の子人気が凄まじかったですね。それに引き換えモットはコワモテだしなぁ。

(注14)キッスのエース・フレーリーは、エリアル・ベンダー(本名:ルーサー・グロヴナー 元スプーキー・トゥース)のステージ衣装を見て、「スペース・エース」の衣装を思いついたそうですよ。エース・フレーリー、チェリー・サンバーストのレスポール・カスタムから繰り出す徹頭徹尾シンプルなロックンロール・ギターがめちゃくちゃかっこよかったですよね。きっと、アメリカのギター小僧だったエースもモットが大好きだったんでしょうね。わかるわかる~!えっ?エース・フレーリーをまったくご存じない?(泣)こりゃまた失礼いたしました~!(植木等口調で)