[試練?]
ホノルルセンチュリーライド100マイル折り返し地点で脚に激痛が走り、あわや転倒の僕。
とりあえずセルフマッサージ&ストレッチを試み、どうにか痛みが収まったらエイドステーションのスポーツドリンクやクッキー、バナナ(カリウムを含み、筋肉の痙攣を防ぐ)を多めに摂りエネルギー補給。しかし脚の違和感はあまり改善されてない。往路、脚に負担をかけすぎたのが原因なのは明らかだ。こんな状態であと50マイル走れるだろうか。

この100マイルの折り返し地点でも以前(申し遅れたが、僕は1999年、2000年とこの大会に連続参加、100マイルを完走している)よりだいぶ日本人(らしき)が多く、皆さん、なごやかに談笑されている。心配になった僕は、誰かに声をかけ、復路は一緒に走ってもらおうか?と虫がいいことを考える。


そんな状態でかなり弱気&慎重に再スタート。
「もうアタックはしないぞ 。したら今度は脚が終わりだぞ」と自分に言い聞かせて走り出すと、前述の「North Texas」の女性サイクリストとそのエスコート役の男性が僕をスルスルッと追い抜いていった。僕の恋もここで終わりです。アデュー(笑)。

そんな僕の前に次に現れたのが、MTBに乗った小柄な女の子。東京の某スポーツショップ名の入ったゼッケンを付けているので、十中八九日本人だろう。太いブロックタイヤ&ジョギングシューズで脚をクルクル回して一生懸命走っている。… ということは彼女、およそ長距離向きではないこの機材で、少なくとも僕より先に100マイルの折り返し地点に到達していたということだ。 スタートが多少先だったとしても、Oh!彼女のセンチュリーライドスピリットに拍手!

しかし、いちおう「ロード系」バイクの僕とはペースが合いそうもないので、「オン・ユア・レフト(相手は日本人なのに英語?)」と声をかけ、先に行かせてもらう。(どうしてそこでさりげなくアシストしてあげないのかなぁ!「脚に心配がある自分」と「長距離に不向きな機材の彼女」なら、同じくらいのハンデだろ?誰かにいっしょに走ってもらいたかったんじゃないの?もしかして、彼女はハワイの神々の使いかもしれないのに)

と、この行動がまたもやハワイの神々の怒りを買ってしまったのか? 5分もたたないうちに、僕のバイクの後輪に違和感が。もしやパンク? しかたなくコースをそれ、大きな木の下にバイクを持っていき確認すると、まごうかたなきパンクチャーである。おまけに、雲がたれこめていた空からは雨粒が降ってきた。僕がチューブを交換するためホイールを外していると、先ほどの彼女がわき目もふらずに走り去って行くのが見えた。

そうして木の下で作業をしていると、コースを走っていた赤っぽいウエアのロードバイク乗りが何事か言いながらスピードダウンするのが目の片隅に見えた。と、彼は後方を確認することなく、急にUターンを始めたのである。危ない!

「ガッシャーン!」後続のサイクリストが避けきれずに突っ込み、彼は路肩に派手に倒れた。あ~あ、こういう、いきなり進路を変えたりUターンしたりする人、ママチャリにはよくいるんだよな! 参加者が増えるのはいいけど、こういう人は困りもの!

僕がチューブを交換し終わり、タイヤに空気を充填するころには、ガッシャーンした彼もサポート班に世話をしてもらい、自力で帰ろうとしていた。まったく! もしヘルメットがなかったら、どうなっていたことか。

そんな姿を見届け、作業を終えた僕もドリンクを飲んで走り出す。すると、つい先ほどまで小降りだった雨が急に激しく路面を叩き始めた。まぁ、ハワイにはよくあるスコールなのだが、「きっとこれはハワイの神々がオーバーヒートした脚と頭を冷やしなさい、と降らせた慈愛の雨に違いない、おお、ありがたや、ありがたや」とあえて雨に打たれるままに走る。信ずるものは救われる。正直、暑いし、ちょうどシャワーを浴びたかったんだ(笑)。

はたして、まもなく雨はピタリとやみ、またたく間に青空が戻ってきた。しかし、脚のほうは思わしくなく、ちょっとした坂で立ちこぎをしようとすると「や、やめてくだせぇ御主人様」と訴えるのだ。これは困った。3回目にして初のリタイヤか?それだけはご勘弁を、心を入れ替えますから、とハワイの神々にお願いしつつ走る。

ということで、復路は薄氷を踏むような心持ちで(たかがツーリングイベントじゃん!走れなかったらサポート班のクルマに乗せてもらえばいいじゃん!だれも責めたりしないよ)抑えて走りながら、脚の不安から目をそらす意味も含めていろいろなタイプのサイクリストをウオッチした。すると、いくつかのタイプに分けられるのに気がついた。「知的生産の第一歩は分類すること」と、恩師であるM編集長も言っておられたし、どんなタイプのサイクリストがいるか以下に大ざっぱに分類してみた。ちなみに番号は順位とは無関係なので、念のため。

①白人の、ウエアもコーディネイトされていて、バイクもいいものに乗っていて、走りもステディなおぢさま。どこかの馬鹿とは違い、意味のないアタックはしない。大人の走りとも言えましょうか。自転車が好き、ロングライドが好き、というのを語らずとも静かにアッピールしている感じ。僕もこうありたいと思う。

②典型的ガイジン女性サイクリスト。体格がよくて健康そう。笑顔がチャーミング。上りには少々弱い。だけど下りとなるや、「キャホ~!」とか「フォ~!」といった奇声を発しながらすっ飛んでいく。ちなみにマ●ロードのい●ちゃんはもろにこのタイプ。でも落車には気をつけてくださいよ。ほんとに。

③典型的ニッポン人カップル。男性のほうは日ごろから乗っている感じ。女性のほうは「美白命」みたいな感じでちょっとつらそうに走る。この手のカップルがよく道端で休んでいた。もしかして彼女のほう、「ダマされた?」と思っているのかも。でも、二人でゴールまで行けたら、きっと来年も走りたくなるよ!アレアレ!

④ニッポン人(たぶん)の「ロードバイクおじさん」。増えた。もしかして、ホノルルセンチュリーライドはロングライド系おじさんの聖地となりつつあるのか? あっ!今、「160km程度のツーリングでしょ。たいしたことないじゃん」と思った人いますよね?そういう人にこそ走ってもらいたいと私は思う!生活習慣病予防のためにも、もっともっと自転車に乗ろう!「トラック1台分の薬より1台の自転車を!」 である!

⑤重量級ガイジン女性サイクリスト。土地柄なのか、わりと目につく。さすがに上りはつらそう。ドロップバーの下を持ったらお腹がつっかえそう(おいおい他人事みたいに)。でも、こんがりと日焼けしていて、お外で遊ぶのと、食べることと、もちろんバイク(言わずもがな英語圏では自転車のこと)大好き! という感じが好感度大。

……とまぁ、こんな感じだろうか? 

[危機]
もうホノルルをスタートして70マイルほどだろうか。復路のジャングルロードにさしかかる頃になると、なんとなく同じペースの、主に英語圏のサイクリストの小集団ができた。僕もそこに交ぜてもらう。皆、暑いところでの走り方を心得ているのか、あまりスピードを出さずに体力をキープしながら走っている感じだ。

しかし、やはり太陽が真上から照りつけるジャングルロードは暑い。ハワイはやっぱり亜熱帯なのかなぁ、日本も温暖化でだんだんこうなっていくのかなぁ、などと漠然と地球環境に思いをはせながらたんたんと走る。

走りながらウオーターボトルを手に取ると、水があまり残っていないことに気がついた。先ほどの100マイルの折り返し地点で多めに水分補給したとはいえ、気温が高いこのコースでは、頻繁な水分補給は必須。なのに今回の僕はどうしたことかショートサイズのボトル1本しか持っていない。次のエイドステーションはまだかなり先のはずだ。これだけでもつか?

過去2回はちゃんとロングボトル2本を持って走ったのに、なぜ今回は1本しか持ってこない? と自分を責めても遅い。抑えて走ってはいるのだが、水分不足気味なのも加わり、ゆるい上りなど負荷が増えると脚が危ない兆候をみせる。自転車の場合、準備をおろそかにしたり、手を抜いたりすると、全部自分に返ってくるんだよね。自転車うそつかない。

などと納得している場合ではない。また攣りそうな左脚をかばっていたら、右脚の内側広筋あたりがキリキリと痛み始めるではないか。両脚かよ! しかたなく、なにもないジャングルロードだが止まって休むことに。

オアフ島のうっそうとした林の中で一人ぽつねんと取り残された僕。空にはギラギラと照りつける太陽。あたりに人影はなく、ときおり鳥の妙な鳴き声が響くだけだ。…ふう~、このへんにくだものでも生ってないかな? ちょっと茂みに入ってみようか…?

…いかん! モチベーションを甦らせなければ、僕はここでオアフ島の「野人」となってしまう!…でももしかしたらそれもいいかも? いやいやダメだ、日本に戻らなければ(おいおい)。…どうも頭が混乱してきたぞ。

                                                                    (まだ続く)