にんじんジュースの作り方

にんじんジュースの作り方

足利の天使

だいぶ前、自転車のツーリング本(K談社刊)のイラストマップの仕事をした。

イラストマップを描くだけでなく、MTBを持ち込んで実際にコースを走ったり、編集のT中さんのお手伝いをしたり、とても楽しい仕事だった。 

そのコースの中で、佐野・藤岡といった北関東の土地はどこか懐かしい独特のたたずまいで 印象に残っていた。

その後しばらくたって、ロードバイクで渡良瀬サイクリングロードを使い佐野まで自走で行ってみた。
渡良瀬川の、なんともニッポン人の郷愁を誘う風景を満喫し、佐野の町に着いた。

かつての印象どおりの、地味だが品格ある街並みが実にしっくりきた。
「できることなら、このあたりに住みたいな」と思った。

何回か佐野まで走って、佐野ラーメン(すっきりした後味が秀逸だ)を食べたり、町を散策したりした。

そして、「おとなりの足利もきっといいところに違いない」という本能的な確信が芽生え、今度は足利まで行ってみた。
途中までは佐野と同じルートなので安心だ。帰りは東武線で輪行すれば自宅の最寄り駅まで一本だし。



空がオレンジ色に染まりはじめたころ、足利の町に着いた。ぺダリングをゆるめ、ここちよい初夏の風に吹かれながら川沿いを流す。なんともレトロな橋の中ほどから水面を見おろせば、澄んだ川の水越しに川底の石がよく見える。

川沿いに戻り、ゆっくりと自転車を進めていると、むこうから自転車に乗った女子学生たちが夕日を背にして1列で近づいてくる。髪が、川風を受けてしなやかになびいている。 昭和30年代の日本映画を思わせる印象的な光景だ。

「こんにちは~」先頭の女子が私に声をかけてくる。自慢ではないが、生まれて初めての経験である。とっさに返すことができず、会釈するのみ。

しかしそれだけではなく、次の女子も、そのまた次の女子も、皆おなじような「こんにちは~」「こんにちは~」と、輪唱するかのように繰り返すではないか。


オレンジ色に染まった渡良瀬川にひびく少女たちの美しい声。これほど美しい「こんにちは」を、私はいまだかつて聞いたことがない。

ああ、まるで、この町は、私を待っていてくれたくれたかのようだ。私はよい時を選んだ。


言葉にできない思いがみちてくる。



私は夕日がかなたに沈むのを見届けると、1日の疲れをいやすため、駅から少し離れた、店の灯りがぽつりぽつりと点る一角に自転車を押して歩いて行った。



 

のうさぎマリオの東京散歩 その1

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